平成24年新嘗祭で天皇陛下に献上したお米「つや姫」。
約20haという広大な土地で、つや姫をはじめ雪若丸、はえぬき等全6種類もの米品種を生産する農事組合法人 田沢頭グリーンメイトの石垣さん、伊藤さん達にお話をお伺いしました。
変化する米づくり現場
「米という漢字を分解すると「八十八」という数字が浮かび上がります。これは米づくりは88回の手間をかけなければいけない、という先人たちの教えを表しているんです。」
種を蒔き、田植えをして、稲刈りをする、田植えといえば、代表的な作業がいくつか思い浮かぶと思います。その作業だけをイメージするととても88回には及びません。ですが、農家さんたちは草刈りから水の管理など朝晩毎日田んぼへ向かいます。「その証拠に田んぼの中には人の足跡がたくさんあったものだ」と笑顔で話をしてくださいました。
今では機械の発達や農薬を使用して、手間は少なくなっていますが、やはり手間をかけなければ失敗をしてしまうこともあるそうです。
中でも土づくりが大切で、堆肥や肥料の量が要になります。米づくりには堆肥や肥料の量の基準値があります。ですが、近年の米価の低下により、土づくりにかけるお金を削る農家が増えたことによって、お米の出来が悪くなってしまっています。
また、皆さん知っての通り、お米にはコシヒカリ、つやひめ、あきたこまち等様々な品種があります。一つ一つの品種によって水の量、肥料の量も異なります。毎年の気候ももちろん異なるので、小国での米作りは一つ一つの品種、気候に合わせて毎年作り方を研究して安定した美味しさのお米を生産しています。
「百姓の世界には卒業証書は存在しません。これは米作りには終わりがないからです。だから米作りはおもしろいんです。」伊藤さんはそう語ってくれました。
認められたお米
米作りに誇りを持って取り組んでいる生産者さん達が作る小国のお米。
中でも石垣さんが作るお米は平成24年新嘗祭で天皇陛下に献上したお米として認められています。
米作りの変化によって、手間や土づくりを削減して作るやり方が主流になってしまった米産業。ですが、そんな状況下でも小国では基準を疎かにせず、生産をしています。
また、米作りには栄養豊富な水が欠かせません。小国町は冬は2mを超える積雪がある豪雪地帯で、「白い森」と呼ばれるブナの原生林が広がる自然が豊かな町です。 田沢頭グリーンメイトの田んぼには、ブナの原生林から湧き出すミネラルの豊富な水が注がれています。
手を抜かずに、手間暇をかけた生産方法と基準をきちんと満たした量の堆肥に小国町の土地の恵みが相まって小国町のお米は全国に認められた称号を得たのです。
小国ブランド確立を目指して
今まさにブランド化に取り組んでいる小国産のお米ですが、小国ブランドの確立には現在までも約30年の月日がかけられています。
山形県は全国でも有数の米どころでです。小国町は山形県内で置賜という南側の地区に属しますが、北側の地区である庄内産のものが全国的に有名になっています。
そこで、小国のお米をどうやって広めていくか、石垣さんの先代である正憲さんは考えました。
その頃、たまたま大幸製薬の工場が小国町に進出をしてきます。大幸製薬が正露丸を作る際の副産物としてできるのが、木酢液でした。当初木酢液は正露丸生産の廃棄物として扱われており、無駄になってしまっておりました。そこで正憲さんは木酢液を有効活用できないかと考えました。
この木酢液を使用することで、農薬の代わりとして抗菌・外注対策ができるため、減農薬で米の栽培を行えるようになりました。また、土壌の改良にも効果があり、小国のお米としても付加価値がつき、ブランド化ができるため、木酢米というブランド確立に向けて研究・生産を開始しました。
そのことが町長からも認められ、木酢米を正式なブランドにしようと国への申請を行い、今ではふるさと納税でも人気の商品となっています。
天然物由来である木酢液を散布すると、植物の活性が上がり、作物の品質向上も望め、稲が元気になります。
そんな元気に育ったお米は、炊き上がった時のお米の輝きが違います。
米づくりを続けていくために
米作り農家は、高齢化が進み、後継者不足が叫ばれている現状です。
田沢頭グリーンメイトの田んぼでも、もちろんそれは変わりません。
そのような状況の中で米作りを続けていく中で、誰が田んぼを任されても、米作りができるようにしていくことが大切。その中で、小国米のブランドや新製品の開発、販路開拓等、小国の恵み満点のお米を後世にも引き継いで、多くの人に楽しんでもらえるように、これからも小国の米作りは続いていきます。
取材:小国町地域おこし協力隊 西村 美祈